
お客さんから譲り受けた、ビクターのカセットデッキ。
名機、KD-A55。
ビクターの伝統的なレイアウトで、カセットホルダーが右。
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Victor KD-A55消費電力 21W/AC
モーター 電子制御DCモーター(キャプスタン用)
DCモーター(リール用)
ヘッド SA(センアロイ)・・・・・・・・・・録音/再生
2ギャップ SA(センアロイ)・・消去用
フエライト・・・・・・・・・・・・・・・自動選曲用
周波数特性(0VU録音)
メタル :30~12,500Hz(±3db)
VX/クローム :30~8,000500Hz(±3db)
SF/ノーマル :30~8,000500Hz(±3db)
(-20VU録音)
メタル :20~18,000Hz(±3db),30~16,000Hz(±3db)
VX/クローム :20~18,000Hz(±3db),30~16,000Hz(±3db)
SF/ノーマル :20~17,000Hz(±3db),30~15,000Hz(±3db)
SN比 ANRS-OFF・・・・60db(WTD、1kHz、3% THD、メタルテープ)
ANRS-ON・・・・・1kHzで5db、5kHz以上で10db向上
Super ANRSの効果(ノーマルテープ)
SN比の向上・・・・・・・・・・・・・・・・・・ANRSと同じ
周波数特性の向上・・・・・・・・・・・・・・0VU録音 10kHzで6db
・・・・・・・・・・・・・+5VU録音 10kHzで12db
歪率の向上・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0VU録音 10kHzで3%以下
・・・・・・・・・・・・・+5VU録音 10kHzで3%以下
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まだまだ書きたいデータもあるのですが、興味ない人にはチンプンカンでしょう。
言いたかったのは、「Super ANRS」というシステムのこと。

映画とか観ていてエンドロールで「DOLBY(ドルビー)」というのを見かけたことがあると思います。
因みに映画の音声でドルビーを用いたのは、1971年に公開されたスタンリー・キューブリック監督の英国映画『時計じかけのオレンジ』が初のドルビー映画(録音時のみ、上映時はモノラル)。
エンドクレジットにも記載されているが、商標のドルビーマークは当時存在しなかった。
話が脱線しましたが、ドルビーには業務用のAやSRというタイプがあり、民生機用はBが主流でした。
Bが主流と書きましたが、他のタイプが開発されておらず、ただ単に「ドルビー」と呼んでいました。
ドルビーというのは、テープ特有のノイズを除去するシステム。
ただ、体感的にこもったような音に聞こえるという点がありました。
で、国産オーディオメーカーがドルビーの次世代のシステム開発をし、普及させようと懸命でした。
国産の代表的なもので、東芝の「adres(アドレス“Automatic Dynamic Range Expantion System”の略)」。
「adres」は国産ノイズリダクションシステムの中では最も普及し、adresユニットやadres内蔵カセットデッキ・ラジカセだけでなく、adresミュージックテープやadresディスク(レコード)もリリースするなど、ハード・ソフトの両面でadresを推進しました。
そして、日本ビクターの「ANRS(アンルス“Automatic Noise Reduction System”の略)」。
「ANRS」は「ドルビー」と互換性があるとされていたので、この「KD-A55」に「ドルビー」は付いていません。
で、問題の「Super ANRS」。
当時、カセットテープ自体高価で、安いノーマルテープでこの「Super ANRS」を使えば高音質のテープを使用したときのようにノイズがなくなるという、夢のようなシステム。
一般に、ノーマルテープは中低音域が良く、クロームテープは高音の伸びが良いと当時は言っていました。
これらのシステムを使えば、ノーマルテープの特性を生かしたままノイズを除去できるということです。
が、しばらくして「ドルビー」から「ドルビーCタイプ」という、もっと優れた国際基準のものが出てきます。
そして、それまでの「ドルビー」は「ドルビーBタイプ」と呼ばれるようになります。
それ以来、カセットデッキには「ドルビーB」と「ドルビーC」両方搭載したものが出回り始めます。
「ドルビーB」と「dbx」というのを搭載したメーカーもありましたが、「dbx」がシステムが高価だったので、大抵は「B」と「C」が多かったです。
ビデオの「VHS vs ペータ」、「レーザーディスク vs VHD」、「Windows vs アップル」にも似た戦争が、カセットデッキの世界でもあったのです。
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僕が高校入学時に購入したのは「ドルビー」内臓のソニーのデッキ「 TC-K40」。
まだメタルテープの無いころのデッキでした。
エコーの機能やマイクミキシングの機能がある変り種のデッキでした。

後に、メタルテープの出現などで、上級機が欲しくなった頃の憧れのデッキが今回紹介の「KD-A55」。
その後、新しいデッキを購入しようとした時には、「ドルビーC」が多くのデッキに普及しており、戦争の決着もついた感じの中、AKAIのデッキを購入。

結局、このノイズリダクション戦争中の機種を購入することはなかったのですが、それでもあこがれていたビクターのデッキですので・・・・
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カセットデッキというものは、簡単に言えば、音のコピー機。
で、原音に近づくほど定価が高い。
また、その近づき方にも、質を求めたりするので、僅かな音の違いで数万円も違ったりと・・・
やれ「AKAIは音が硬い」とか、「ソニーのアモルファスが・・・」とか、マニアは騒いでいた。
現在はデジタルでコピーの時代なのだが、CDの音を軽くして(劣化させて)携帯している時代。
原音に近づくとか、音質がとかいう世界は判るまい。
かくいう自分も、手軽さからCDを圧縮してパソコンで聴いているのだが・・・