「黒い宇宙船」ラインスター作 / 野田昌宏 訳 ・ 柳原良平 絵
同出版社では挿絵を替えて版を重ねています。
イラストは 赤石沢 貴士さん。
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「あらすじ」 火星や金星に既に人の住む次代。
新しい新天地を求め、プロクシマ・ケンタウリ星へに行っていたスター・シャイン号が調査を終えて帰ってきた。
ラッセル隊長によるとプロクシマ・ケンタウリ星の五つの惑星の内三つの惑星は人の住める星らしい。
が、隊長は「プロクシマ・ケンタウリ星の惑星に、地球人の町を作ってはいけない」という。
なぜなら、プロクシマ・ケンタウリ星の第三惑星を調査した際、誰も来たことのないハズの星に一抱えほどのピラミッド型の箱を見つけた。
二人の少年隊員のハンクとチヨコがその箱を開けたとたんスイッチが入り、内臓のカメラと送信機でスター・シャイン号の姿などが伝送されたとのこと。
相手はまずプロクシマ・ケンタウリ星に攻めてきて、次に地球にも攻めてくると警告する。
が、誰も警告を聞き入れない。
「ごめんなさい」とラッセル隊長に謝るハンクとチヨコ。
「いいんだよ。ピラミッドのことは私の考えすぎかもしれないからね。二人は宇宙パイロットの勉強をがんばりなさい」
と、やさしく声を掛けて去っていった。
5年後、地球からプロクシマ・ケンタウリ星を目指し、何十そうもの大型宇宙船が旅立った。
それからさらに5年後、太陽系博物館にスター・シャイン号は展示されている。
このスターシャイン号を強奪すべく二人の男女がいた。
世間から「こしぬけラッセル」と呼ばれ、今は火星でひっそりと住むラッセル隊長を連れ出し、プロクシマ・ケンタウリ星に訪れようとしている危機を救わんとする、大きく成長したハンクとチヨコである。
はたして、ただの調査船のスターシャイン号だけで、人類より優れた科学力をもつ、まだ見ぬ敵に勝てるのか?
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「感想」この「SFこども図書館」シリーズを読むきっかけになった本である。
子供の頃の記憶というのは時とともに大げさに脚色されたりする。
子供のころ「おもしろい」と思った本作。
大人になって読み返し、「もし、つまらなかったらどうしよう?」と不安だったが、やはりおもしろかった。
で、せっかくなら全シリーズを読もうと思ったのである。
話は「さらば宇宙戦艦ヤマト」を彷彿させる。
かなり日本人好みのストーリー。
柳原氏のポップなイラストもいい。
今の子供達にも充分受け入れられる上質なSFであろう。
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マレイ・ラインスター(Murray Leinster, 1896年6月16日 - 1975年6月8日)
まれにレンスターとも表記される。
別名のウィル・F・ジェンキンズ(William Fitzgerald Jenkins)でも知られる。
1954年にアスタウンディング誌に発表された『最初の接触』(First Contact)は、ファースト・コンタクト・テーマの古典的傑作として有名である。
1956年、『ロボット植民地』でヒューゴー賞短編小説部門を受賞。
邦訳作品リスト
『青い世界の怪物』 Creatures of the Abyss
『宇宙行かば』 Men into Space
『オペレーション外宇宙』 Operation: Outer Space
『異次元の彼方から』 The Other Side of Here
『第五惑星から来た四人』 Four from Planet 5
『地の果てから来た怪物』 The Monster from Earth's End
『ガス状生物ギズモ』 War with the Gizmos
「タイムトンネル」シリーズ
『タイム・トンネル』 The Time Tunnel
『タイム・スリップ!』 Timeslip!
「メド・シップ」シリーズ
『祖父たちの戦争』 Doctor to the Stars
『惑星封鎖命令!』 S.O.S. from Three Worlds
『禁断の世界』 The Mutant Weapon/This World is Taboo
『宇宙震』 Things Pass By
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野田昌宏(のだ まさひろ、本名:野田 宏一郎(のだ こういちろう)、1933年8月18日 - 2008年6月6日)
福岡県生まれの日本の小説家、SF作家、翻訳家、宇宙開発評論家、TVディレクター、プロデューサー。
元日本テレワーク株式会社代表取締役社長(後に相談役)。
株式会社ガイナックスの元監査役。SFファンには、「宇宙軍大元帥」として知られる。
1960年代には主に本名の野田宏一郎名義を用い、1970年代以降は野田昌宏名義を用いた。
政治家の麻生太郎は従弟(野田昌宏の母・ツヤ子が麻生太郎の父、麻生太賀吉の妹にあたる)。
また、母を通して、多くの知名人と親戚関係になる。
また、父方の祖父・野田勢三郎は農商務省に勤務した地質学者であり、妻が麻生太郎(政治家・麻生太郎の同名の祖父)の妻の姉だった関係で、麻生太吉の依頼で麻生商店に入社して実業家としても活躍した。
父の野田健三郎は九州大学教授、電気工学研究者。母ツヤ子と健三郎はそれぞれの母が姉妹だったので、野田の両親は「いとこどうし」が結婚したことになる。
テレビ番組制作フジテレビ時代にはディレクターとして『日清ちびっこのどじまん』『祭りだ!ワッショイ!』『第三の眼』などの人気番組を手がける。
日本テレワークとして手がけた番組は『ひらけ!ポンキッキ』、『料理の鉄人』、『発掘!あるある大事典』、『クイズ$ミリオネア』など多数。
ちなみに『ひらけ!ポンキッキ』の番組キャラクターガチャピンのモデルである。
また、「ポンキッキ」製作時にはデビューしてすぐの「スタジオぬえ」(加藤直之、高千穂遙、宮武一貴)を起用し、「そらとぶさんりんしゃ」「宇宙船地球号のマーチ」などのイラストや、アニメーションを担当させていた。
SF関連の活動世界有数のパルプマガジンの収集・研究家であり(当人によれば「東洋一」)、SF史の研究書を何冊も刊行した。またパルプ雑誌にとどまらず、古いSF雑誌の素晴らしいカバーアートを紹介する本も多数刊行している。
海外SF、特にスペースオペラを多数翻訳・紹介することにより、『SFマガジン』初代編集長の福島正実が目指した「洗練されたハイブロウな文学路線」とは別の、「奇想天外な娯楽SF」の楽しさを知らせ、SFファン層の拡大に大きく貢献した。
特に、「べらんめい口調」などを使う、登場人物たちの人間味あふれる会話は、伊藤典夫をして「翻訳とも創作ともつかない」独特のものと評させた。
しゃれで名乗った「宇宙軍大元帥」の称号が縁で、1977年に設立されたSFファングループ「宇宙軍」の相談役(最高顧問)となる。
映画『スター・ウォーズ』に熱狂し、『スター・ウォーズ』関連本の翻訳や、テレビ放送時の監修などを担当。
SF作家として、人情味あふれるスペース・オペラ《銀河乞食軍団》シリーズや、処女作「レモン月夜の宇宙船」に代表される「TVマンにしてSFマニアの野田昌宏」を主人公としたロマンあふれる虚実皮膜の短編群などを執筆。
また、長年にわたり『SFマガジン』にコラムを執筆し、最後まで「ファンにSFの楽しさを伝える」内容であった。
「スタジオぬえ」創設当時、野田が翻訳刊行していたA・バートラム・チャンドラーのスペース・オペラ「銀河辺境シリーズ」の挿絵及びメカ設定を「スタジオぬえ」に依頼し、日本にSFアートを根付かせるよう応援した。
また、本人の似顔絵のほとんどを加藤に描かせていた。
著書『スペース・オペラの書き方』では、スペース・オペラにとどまらない、アイディアやシュチュエーション、キャラクターなどを小説にまとめあげていく創作方法を、丁寧に説いた。
宇宙開発、特にNASAに関するレポートを『SFマガジン』をはじめとする多数の媒体に発表し、宇宙開発の啓蒙につとめた。
小説宇宙からのメッセージ(角川文庫、1978年) - 同名映画のノベライゼーションだが、映画と離れたオリジナル小説となっている。
銀河乞食軍団シリーズ(ハヤカワ文庫、1982年 - 1995年)
銀河乞食軍団1 謎の故郷消失事件(1982年)
銀河乞食軍団2 宇宙翔ける鳥を追え!(1982年)
銀河乞食軍団3 銀河の謀略トンネル(1982年)
銀河乞食軍団4 宇宙コンテナ救出作戦(1983年)
銀河乞食軍団5 怪僧ゴンザレスの逆襲(1984年)
銀河乞食軍団6 炎石の秘密(1986年)
銀河乞食軍団7 決戦!金太郎岩礁(1986年)
銀河乞食軍団8 隠元岩礁に異常あり!(1986年)
銀河乞食軍団9 タンポポ村、発見!(1987年)
銀河乞食軍団10 次元穴のかなた(1988年)
銀河乞食軍団11 タンポポ村、還る!(1989年)
銀河乞食軍団12 異変! <星古都>星系(1991年)
銀河乞食軍団13 異次元の美姫(1992年)
銀河乞食軍団14 宇宙妖魚の怪(1992年)
銀河乞食軍団15 宇宙艇レース狂躁曲(1992年)
銀河乞食軍団16 クロパン大王、宇宙艇レースに出艇(1993年)
銀河乞食軍団17 クロパン大王、出撃!(1995年)
銀河乞食軍団外伝1 木枯山猫街道8番地(1985年)
銀河乞食軍団外伝2 禿蔓草107号只今出動!(1987年)
銀河乞食軍団外伝3 キャットントン星系宝船事件(1990年)
銀河乞食軍団外伝4 金米糖錨地、トマト爆弾事件(1991年)
あけましておめでとう計画 - 実録・日本テレワーク物語(早川書房・単行本、1985年、短編集)
キャベツ畑でつかまえて - 実録・日本テレワーク物語(ハヤカワ文庫、1990年、改題)
風前の灯!冥王星ドーム都市(創元SF文庫、2008年)
SF解説・エッセイ
SF英雄群像(早川書房、1969年)
SF考古館(北冬書房、1974年)
SFパノラマ館(北冬書房、1975年)
スペース・オペラの書き方-宇宙SF冒険大活劇への試み(早川書房、1988年)
新版スペース・オペラの書き方-宇宙SF冒険大活劇への試み(早川文庫、1994年)
愛しのワンダーランド スペース・オペラの読み方(早川書房、1994年)
「科學小説」神髄(東京創元社、1995年)
SFを極めろ!この50冊(早川書房、1999年)
図説 ロボット - 野田SFコレクション(河出書房新社、2000年)
図説 ロケット - 野田SFコレクション(河出書房新社、2001年)
図説 異星人 - 野田SFコレクション(河出書房新社、2002年)
ノンフィクション
宇宙船野郎 月に行く夢にかけた男たち(秋田書店、1970年)
少年宇宙飛行士(岩崎書店、1986年)
やさしい宇宙開発入門-予備知識不要! スプートニクから宇宙ステーション構想まで(PHP研究所、1993年)
野田昌宏の宇宙旅行史 曙編 - 近代ロケットが叶えた人類の夢(アスキー、1998年)
宇宙ロケットの世紀(NTT出版、2000年)
ゲーム
ハイブリッド・フロント(セガ、1994年) - 監修
主な訳書
エドモンド・ハミルトン
スターウルフ・シリーズ(早川書房、文庫。日本で特撮実写化)
キャプテン・フューチャー・シリーズ(早川書房→東京創元社、文庫)
ニール・R・ジョーンズ
ジェイムスン教授シリーズ(早川書房、文庫。イラストは藤子・F・不二雄)
ケネス・ロブスン
ドック・サヴェジ・シリーズ(早川書房、イラストはバロン吉元)
A・バートラム・チャンドラー
銀河辺境シリーズ(早川書房、文庫)
グライムズ・シリーズ(早川書房、文庫)
ジョン・ジェイクス
第二銀河系シリーズ(『今宵我ら星を奪う』他)(早川書房、文庫)
デイヴィッド・ファインタック
銀河の荒鷲シーフォート・シリーズ(早川書房、文庫)
タッド・ウィリアムズ
アザーランド・シリーズ(早川書房、文庫)
ボブ・ウォード
宇宙はジョークでいっぱい~宇宙開発ちょっといい話~ (角川書店、文庫)
ジョージ・ルーカス他
スター・ウォーズ(角川文庫)
スター・ウォーズ―帝国の逆襲(徳間文庫)
スター・ウォーズ―ジェダイの復讐(角川文庫)
ゲリー・ジェンキンズ
ドキュメント《スター・ウォーズ》―ジョージ・ルーカスはいかに世界を変えたか(扶桑社→文庫)
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柳原 良平(やなぎはら りょうへい 1931年8月17日-)
1954年京都市立美術大学卒業。
海運会社専属の画家を目指すが日本にはそのような職がなく、壽屋(現サントリー)に入社。
同社宣伝部で開高健、山口瞳とともにトリスウイスキーのCMを制作、柳原の描いたCMキャラクターのアンクルトリスが人気となり毎日産業デザイン賞、電通賞などを受賞。
その後、サントリーが制作した「洋酒天国」に掲載したイラストも人気を呼ぶ。
また、個人アニメーション作品を制作。
1960年には 久里洋二・真鍋博と「アニメーション三人の会」を結成。
草月ホールで定期的に上映会を行う。
なお、作家となった山口瞳の著書のカバー絵や挿絵の多くを、担当している。
山口の小説を映画化した『江分利満氏の優雅な生活』でも、アニメーションを担当している。
1959年サントリー退社後は、船や港をテーマにした作品や文章を数多く発表。
1977年横浜文化賞受賞、1987年運輸大臣賞受賞、1990年運輸省交通文化賞受賞。
商船三井、佐渡汽船、太平洋フェリー、東海汽船の海運各社から名誉船長の称号を贈られている。
特に東海汽船では高速船「アルバトロス」のデザインを担当し、さらに超高速ジェット船「セブンアイランド(愛・虹・夢)」の命名並びにデザインを担当している。
また、商船三井では同社のコンテナの「ありげーたー」マークをデザインしており、
同社のWEBサイトのトップページにも柳原のイラストが使用されている。
帆船日本丸の「帆船日本丸記念財団」理事。
横浜市在住だが、広島県福山市に「アンクル船長の館」というミュージアムが開設されている。