
R・ジョーンズ作 / 半田倹一 訳・三輪しげる 絵
同出版社では挿絵とタイトルを替えて版を重ねています。
イラストは山田 卓司さん。
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あらすじジョンと妻のマーサは学者だった。
二人を乗せた車は30メートルの崖下に転落。
「うまくいったぞ」
と、上から見つめる三人の人影。
黄色い車に乗り走り去る。
二人は確かに死んだハズだった。
ここは「人工頭脳そうち」を使って、政治など数々の難問を解決し、豊かな暮らしを実現した世の中。
その人工頭脳にくみこむ、科学的訓練をした脳が多く必要だった。
ジョンが目を覚ますとマーサの兄デミング博士がいた。
正確にはジョンはデミング博士がジョンの脳に取り付けてくれた受光板を通して見ている。
人間は死んだらただの死体で、脳は生きていないという政府。
デミング博士は、脳には感情もあり、「人工頭脳そうち」で酷使することに異を唱えるために会議で反対するとのこと。
脳に感情があることは、脳だけになったジョンにも今は判る。
デミング博士は会議に出かけ、帰らぬ人となった。
ジョンは政府の陰謀を暴くため、自分の研究室の技術ロボットを操作して合成神経細胞群塊、略して「ゴセシケ」という怪物を作ります。
これで自分の代わりに外の様子がゴセシケを通して判ります。
しばらくして、マーサの声が飛び込んでくる。
マーサも「人工頭脳そうち」に組み込まれていたのです。
ゴセシケを使って、自分たちを黄色い車を使って殺した政府への復讐が始まる・・・
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感想非常に熱中して読みました。
主人公は脳とアメーバのような一つ目の怪物。
不自由な状況で知恵を使い戦う。
小学生が読むには非常にハードな内容。
しかし、僕はもっと早い時期に読みたかった。
衝撃的なラストを読み終えた後は、しばらく虚脱感に陥りました。
SFというカテゴリーではありますが、一風変わったラブロマンスでもあります。
お勧めの一作。
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レイモンド・F・ジョーンズ(Raymond F. Jones, 1915年11月15日 - 1994年1月24日)
ユタ州生まれ。
ジョン・W・キャンベルに育てられたSF黄金時代作家の1人。
日本語訳された作品。
『星雲からきた少年』福島正実訳、石泉社(銀河書房)、1955年。
『超人集団』矢野徹訳、久保書店QTブックス、1967年。
『地球のさいご』土井耕訳、岩崎書店、1962年。
『合成脳のはんらん』半田倹一訳、岩崎書店、1967年。
『月面基地SOS!』久保田幸子訳、角川書店、1977年。
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1952年の作品"This Island Earth"(未訳)は1955年に同題で映画化された。
これはSF映画の古典の一つとして名高い。映画版は「宇宙水爆戦」のタイトルで日本にも紹介されている。
本作は原題「The Cybernetic Brains (1962)」といいます。
小説家滝本竜彦は、少年時代の読書についてインタビューを受けた際、「一番記憶に残ってる」作品として本作を挙げています。
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半田 倹一1929年東京に生まれる。
明治学院大学英文科卒。
(本書より)
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三輪しげる10.「逃げたロボット」の項を参照。