子供のころ母に聴いた話です。
当時、香川県の高松の沖合いに浮かぶ小島に住んでいました。
僕の祖母は子供のころ、島の海岸(島の北東側)で遊んでいた時、海から自分のいる海岸に向かって、
「ウモーーーッ!」
と、吼えながら迫ってくる牛のような怪物を見たらしいのです。
祖母は転がるように逃げ帰りました。
母がなぜこの話を祖母から聞いたかというと、ネス湖のネッシーが話題になった頃、祖母が、
「瀬戸内海にも不思議な生き物がいるのだから、イギリスの湖に恐竜がいてもおかしくない」
と、娘時代の僕の母に、自分の体験談を聞かせたそうです。
僕は、祖母といるころには本人からこのことを直接聞いたことはありません。
この話は、自分がおかしくなったと思われないために、あまり人には語らなかったらしいのです。
祖母が亡くなって、僕も社会人になってから母とUMAの話になり初めて聞かされました。
祖母は島でも正直者でとおっていました。
この話を聞いて僕は、
「牛を運搬していた船から牛が転落して、そう見えたんだろう」
というと、母が、
「私もただの牛だと思って問いただしたら、牛より巨大で、それぐらいの見分けはつく。牛ではなく、牛のような角を持った怪物だった。と、真剣な顔で言われた」
とのことでした。
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この話はしばらく忘れていました。
転勤で岡山市に住むことがありました。
当時、友人が「釣り」に凝っていて、何度かつき合わされ、当時の牛窓町(現、瀬戸内市)というところへも連れて行かれました。
「日本のエーゲ海」とも呼ばれる綺麗な町でした。
「変わった町名だな・・」
とおもうにとどまっていたいたのですが、岡山に長く住んでいると「牛窓」出身の人に接する機会も多くなり、いろいろな話を聞きました。
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「ウルトラマンA」の第16話「夏の怪奇シリーズ 怪談・牛神男」というのがあり、この「牛窓」が舞台。
で、昔、「ウルトラマンA」がロケに来たという話を聞いたりしました。
実は「牛神男」のこの「ウルトラマンA」の話は僕は覚えていません。
が、この「牛神男」が気になって、「牛窓」について調べると・・・・
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- 牛窓 -神功皇后(仲哀天皇の皇后で、応神天皇の母)が三韓(新羅、百済、高句麗)征伐の道中、この地で塵輪鬼(じんりんき=頭が八つの大牛怪物)に襲われたが弓で射殺。
皇后が新羅からの帰途、成仏出来なかった塵輪鬼が「牛鬼」になって再度来襲、住吉明神が牛鬼の角をつかんで投げ倒した。
この場所を牛転(うしまろび)といい、訛って牛窓になったという。
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祖母の話を聞いたときには、「件(くだん)」のことを連想しました。
「件」とは、漢字のとおり「人」と「牛」の半人半牛の姿をした怪物として知られています。
「件」は西日本を中心として伝わっている江戸時代からの妖怪。
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祖母が「ウモーーーッ!」 と叫ぶ「牛のような怪物」を目撃した島の北東の海岸の先にある町は「牛窓」と最近気付きました。
祖母の話は真実かもしれません。
いや、身内としては100%信じなければいけません。
祖母が「牛窓」のことを知っていたかは知りませんが、
「おばあちゃんが見たのは、たぶん牛鬼だよ」
と、言ってあげたかった。
「牛鬼」もまた西日本に伝わる妖怪です。
主に海岸に現れ、浜辺を歩く人間を襲うとされています。
孫として他の妖怪は信じなくても祖母の見た「牛鬼」は信じよう・・・・
