1. アウトバーン 2. 大彗星(鼓動)
3. 大彗星(軌道)
4. 深夜そして姿なき足跡
5. 朝の散歩
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まず「クラフトワーク」についてと、本作「アウトバーン(Autobahn)」までの経緯を簡単に。
「Kraftwerk」、ドイツ語読みで「クラフトヴェルク」。
「発電所」の意味てす。
1970年にドイツのデュッセルドルフでラルフ・ヒュッターとフローリアン・シュナイダーにより結成されたました。
「クラフトワーク」を名乗る前の「オルガニザツィオーン」時代にイギリスのRCAから出た「Tone Float」は初回プレスのみの幻のアルバム。
「Kraftwerk」名義で同年末に「クラフトワーク1」を発表。
71年前半にラルフ・ヒュッターが脱退。
メンバーはフローリアン・シュナイダー、ミヒャエル・ローター、クラウス・ディンガーとなります。
残された3人は6ヶ月間行動を共にした。
彼らはコニー・プランクのスタジオでアルバム制作を試みたがうまくいかず、クラウス・ディンガーとミヒャエル・ローターは「NEU ! (ノイ)」結成。
クラフトワークにはラルフ・ヒュッターが復帰し、活動を継続した。
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「NEU ! (ノイ)」
ノイ!のファーストアルバム『ノイ!』(1972年)は3万枚しか売れなかった。
しかし現在ではデヴィッド・ボウイ、ブライアン・イーノ、トム・ヨーク(レディオヘッド)らを含む有力なミュージシャンたちによって傑作と評されている。
2008年、クラウス・ディンガー(Klaus Dinger)が3月21日、心不全のため他界。61歳。
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ドラムのクラウス・ディンガーが抜けたことにより、続く「クラフトワーク2」(71年)ではドラムマシンを使用。
これにより、後のクラフトワーク・サウンドの外輪がうっすら見えはじめる。
1973年「ラルフ&フローリアン(Ralf und Florian)」発表。
ジャケットはラルフ・ヒュッターとフローリアン・シュナイダーの二人の写真である。
これはパフォーマンス・アート・デュオといて名高い「ギルバート・アンド・ジョージ」からの影響というのが定説となっている。
この頃までラルフは長髪だった。
ここまでの作品は現在も正規盤はリリースされていない。
が、「テクノ」というカテゴリの先祖といえるのはこのあたりである。
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「アウトバーン(Autobahn)」1974年11月にフィリップス・レコードよりリリースされた。
タイトルトラックの「アウトバーン」は22分36秒にも及ぶ演奏が、シングルリリースのため3分に編集された。
同シングルはビルボードで25位に到達し、ヨーロッパに於いてもチャートの上位に到達した。
本作は完全な電子音楽アルバムとはいえず、ヴァイオリン、フルート、ギターがシンセサイザーと共に使用された。
当初は前衛的電子音楽を発表しリスナーにはジャーマン・プログレッシヴ・ロックとも捉えられていたが、『アウトバーン』の商業的成功以降、徐々にポップス、そしてダンスミュージックに方向転換していく。
本作にはミニモーグが使用されたが、当時のフォルクスワーゲンに相当する価格であった。
Kraftwerk - Autobahn携帯で見る。
最初「ファンファンファン、アウトバーン」ていうところはビーチポーイズのパロディーかと思ってました。
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この後、クラフトワークのビジュアル・イメージはもっと無機質になっていく。
僕が「Autobahn」を聞き出すのは「ヨーロッパ特急」がヒットしてから遡って聴きました。
クラフトワークの「古いSF映画」を見ているようなビジュアルセンスが好きだったのですが、本作では、まだその辺のところが徹底できていません。
が、最近妙に「クラフトワーク」にハマってます。
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ビートルズが未だ色あせないと言われていますが、僕が中学の頃ビートルズを聞いていると「古い音楽を聴いている変な奴」扱いでした。
なぜ、ビートルズを引き合いに出しているかと言いますと「新しい音楽」という部分でのことなのですが・・
新しい音楽が誕生する要素にテクノロジーという部分は重要です。
ビートルズ成功の秘訣に「時代」というファクターは重要です。
テープレコーダーを駆使することが最先端の時代でした。
ジョンの我がままを実現するために、さまざまなエフェクターが考えられたりしました。
つまり、アーティストありきで、テクノロジーが後から開発される時代でした。
シーケンサーの発達した現代ではビートルズのテープを逆回転したり、切ったり張ったりした音楽も容易に再現出来てしまいます。
まったくありがたくないのです。
ビートルズの表現意欲のスピードの方がテクノロジーを上回っていたことこそ最大の成功の秘訣と思います。
常に世間を驚かせていたということと、聞いている側を置いてきぼりにしていないからこそ一番でありつづけた。
それが短期間の間に「ラブ・ミー・ドゥー」から「カム・トゥゲザー」まで変貌を遂げることが出来たのでしょう。
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クラフトワークの場合、既にあるテクノロジーから表現意欲を貰うパターンです。
ボコーダーという声を変える機械があります。
これを通すと機械的な声になり、誰でも宇宙人やロボットを想像します。
で、それをテーマに作品が仕上がるという具合です。
当然、最新テクノロジーが要になるので、すぐ古い音楽となってしまいます。
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しかし、車に例えるなら、15年前の車ならただの古い中古ですが、30年前の車なら骨董価値が出て需要も増えてきます。
ただ、古くても名車でなければいけません。
ジャケットにも写っていますが、彼らの場合は、やはり「フォルクス・ワーゲン(ビートル)」でしょうか?
クラフトワークの場合、テクノポップの元祖としてではなく、その単純なビートのループというのが幸いしました。
90年初頭には古いものだったクラフトワーク。
途中「古い」とされていた彼らの音楽が再認識されています。
最近のダンスシーンでサンプリングされたクラフトワークのビートをよく耳にします。
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僕自身は「クラフトワーク」自体、ピンクフロイドあたりと同じプログレッシブ・ロックの一部的にとらまえていました。
(僕個人としては、こちらのスタンスで未だ好きな音楽なんですが・・)
単調なリズムとシュールなテーマでトリップしていたのです。
このトリップできるということが、クラブシーンなどで今もクラフトワークが受け入れられている部分です。
無機質に贅肉の少なかったクラフトワークは、未だ古さを感じさせません。
先に述べた感想で「古いSF映画」と述べましたが、彼らは最初から1930年代の人間が想像する未来を描いていました。
ラルフ・ヒュッターの発言で、
「中央ヨーロッパの文化は30年代に切断され、インテリの多くはアメリカかフランスに行くか、抹殺されてしまった。僕らは、この文化を発祥の地で今一度取り上げ、30年代文化を継承し、その精神のもとで活動していく」というのがあります。
この一貫した考えが、当時周りに流されなかった故、古い音楽とおいてきぼりを食らうのですが、時を経て再評価されるにいたったのだと思います。
このあたりの部分は日本でも「ゲルニカ」や「ヒカシュー」が日本人的な見地で継承しています。
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本作「アウトバーン」はドライブしながらトリップしてほしい作品です。